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<相場の見方、歩き方>企業の価格転嫁が本格化、賃金への貢献を期待
2022-07-11 08:00:00.0
―過渡期にあるマーケット、方向性定まらず―
鈴木一之です。マーケットは依然として方向性が定まりません。急騰したと思えばそのすぐあとに急落したり、それと正反対の動きが起こったりと明確なトレンドが見えない状況が続いています。
現在進行で起きていることへの評価と対応策への見方が分かれているのでしょう。景気の波が大きな上昇局面から下降局面に移り変わる時に、まさにこのような急騰、急落という動きに陥りやすいものです。
とりわけ今のように、米国の金融政策が超々緩和の状態から引き締めへと歴史的な転換がなされようとしている時は動きが激しくなります。
6月末の記録的な猛暑は一段落し、「電力不足」という産業界の最も恐れる事態は回避されました。しかし暑さはこれからが本番です。西日本では空梅雨でダムの貯水量が平年よりも大幅に低下しており予断はまったく許されません。
それでも少しずつですが株価は煮詰まり感を増してきました。現在のように変化が押しとどめられているような状況では、変化が始まる時にはすべて一度に表面化するはずです。
変化の度合いを把握するには定点観測が有効です。一週間前の7月1日、3カ月に一度の「日銀短観」が発表されました。今回の短観で示されたデータが今後の相場の動きを占う上で大きなカギを握ると多くの市場参加者が見ています。
最も注目される大企業の「業況判断」の推移は、(前回−今回−先行き)の順で見ると、製造業は「14−9−10」と足元では少し弱い動きとなりました。中国経済がロックダウンの影響で弱まっているためと考えられます。
一方、非製造業は「9−13−13」と少しずつ明るさが増しています。コロナ禍からの経済再開が浸透しつつあります。
―「物価」に対する企業側の見方に変化―
注目されるのは「物価」に対する企業側の見方です。仕入れ価格に対する判断(「上昇−下落」で算出)は、製造業で「58−65−59」、非製造業で「35−43−45」となりました。どちらも高い数値で、しかも原材料は将来一段と上昇すると企業側は見ていることがうかがえます。
それに対して販売価格の判断指数は、製造業で「24−34−35」、非製造業で「13−19−21」となりました。こちらも次第に高まっており、企業側は現在の物価上昇をいよいよ販売価格に転嫁し始めた模様です。
これまで企業は原材料など仕入価格の上昇をコストカットなど企業内の努力で吸収してきました。それがどうやら限界に達しつつあり、販売価格への転嫁が始まっています。その状況が今回の短観でも浮かび上がりました。
企業側の意識を知る上でよりダイレクトに経営者の意識を探る資料が、7月8日の日本経済新聞・朝刊に「社長100人アンケート」として掲載されました。
原材料価格の上昇をどこまで販売価格に転嫁できたか、という度合いを尋ねると、「10%未満」しか転嫁できていないと回答した経営者が29.6%にも達しました。同様に「10−50%」の転嫁ができたと回答した企業も25.4%に達しています。両者を合計すると55.0%と過半数を超えます。
日銀短観と「社長100人アンケート」がそろって同じ調査結果を示しています。経営者の半数以上はこの先にも物価の上昇が待ち受けていると考えています。私たち生活者の立場としては、暮らしぶりは徐々に苦しくなることでしょうが、企業サイドではそれだけマージンを確保しやすくなります。
次なる段階としては、そうして稼ぎ出した物価上昇による利益を社員への賃上げの原資として回してほしいものです。資金が循環し始めれば、一進一退を繰り返しながらも値上げの浸透する日本の株式市場はもう少し底堅さを増してゆくことでしょう。川崎重工業<7012>、豊田通商<8015>、THK<6481>、ピー・シー・エー<9629>、じげん<3679>に注目しています。
*おことわり この記事は、2022年7月10日にYahoo!ファイナンスで有料配信されたものです。
提供:モーニングスター社




