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金融・経済ニュース

ECB、事前通告上回る0.50ポイント利上げ―11年ぶり利上げ再開でマイナス金利脱却

2022-07-22 08:04:00.0

<チェックポイント>

●利上げに伴うユーロ圏市場の分断化回避ツール「TPI」導入へ

●「今後の会合で金利のさらなる正常化が適切」―利上げ継続示唆

●TPIの債券買い入れは「無制限」―期間1−10年の公共債や社債も検討

 欧州中央銀行(ECB)は21日の定例理事会で、11年ぶりに利上げに転換。主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.50ポイント引き上げ、0.50%とすることを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 ECBは前回6月会合で0.25ポイントの利上げを事前通告していたが、その2倍となり、2000年以来22年ぶりの大幅引き上げとなった。このほか、下限の中銀預金金利はマイナス0.50%から0.00%に、上限の限界貸出金利も0.25%から0.75%となり、8年間続いたマイナス金利が前倒しで終了した。

 今後の利上げ見通しについては、「今後の会合では金利のさらなる正常化が適切となる」、「今日のマイナス金利からの脱却の前倒しにより、理事会は金融政策決定会合ごとに政策金利を決定することが可能になる」とし、利上げ継続に加え、今後は小刻みな利上げアプローチが可能になる見通しを示した。

 ECBが大幅利上げに踏み切ったのはユーロとドルがパリティ(等価)になるまで、ユーロ安が進行し、ユーロ圏の6月のインフレ率も前年比8.6%上昇と、5月の同8.1%上昇から加速したことが背景。ユーロ圏のインフレ率は前回5月予想時点では22年が6.1%上昇、23年は2.7%上昇と予想されていたが、現在は、それぞれ7.6%上昇と4.0%上昇に引き上げられている。

 ラガルドECB総裁は会合後の会見で、インフレ見通しについて、「価格圧力はますます多くのセクターに広がっている。インフレはしばらくの間、望ましくないほど高いままであると予想している」とし、警戒感を強めている。

 市場では今後、ECBの主要政策金利は次回9月会合でも0.50ポイント追加利上げが実施され、一部では23年3月までに計1.75ポイント引き上げられ、その後、23年6月には景気後退懸に直面し、利下げに転換すると見ている。

 ECBは利上げ開始に伴い、ユーロ圏市場での利回り急上昇(国債暴落)によりユーロ圏内の「市場の分断化(フラグメンテーション)」が起こるのを防ぐ新たな政策手段として、TRI(金融政策の伝達メカニズムを保護するツール)の導入を決めた。

 TRIは新しい債券購入プログラムで、ユーロ圏内の流通市場で債券を買い入れることにより、ユーロ圏の債券利回りスプレッドを制限し、圏内の資金調達コストを抑えるのが目的。特に、ECBの政策金利の引き上げがイタリアなど経済力の弱い加盟国の債券に投機売りが起こらないようにしたい考えだ。イタリアではドラギ首相(前ECB総裁)が21日、辞任し、投機リスクが急速に高まっており、イタリアとドイツの10年国債利回りのスプレッドは2ポイントを超えている。

 ECBは声明文で、「理事会が金融政策の正常化を続ける中で、TPIは金融政策のスタンスがすべてのユーロ圏諸国に円滑に伝達されることを保証する」、「ユーロ圏全体での金融政策の伝達に深刻な脅威をもたらす不当で無秩序な市場の動きに対抗する」としている。

 また、ECBは、TPIによる債券の購入規模について、「金融政策の伝達が直面するリスクの深刻さによって異なるが、事前に、購入規模は制限されていない」とする方針。その上で、「金融政策の伝達メカニズムを保護することにより、理事会が価格安定性の義務をより効果的に果たす」としている。

 TPIの対象は期限1−10年の公共債(国債や地方債、政府機関債)に焦点が当てられ、過度な財政赤字がないことや、深刻なマクロ経済の不均衡がないこと、持続可能な債務があることなどが条件で、国債以外にも民間の債券(社債)も検討するとしている。

 ECBはAPP(非伝統的手段である資産買い入れプログラム)終了後のバランスシート(保有資産)について、満期償還金の元本の全額を再投資することにより、利上げ開始後も長期にわたり、維持する方針を再確認した。

 すでにECBは20年3月の緊急理事会で新型コロナ危機対策として導入を決めた緊急債券買い入れプログラム「PEPP」(総額1兆8500億ユーロ)による資産買い入れを3月末で終了したが、買い入れた保有国債の満期償還金を少なくとも24年末まで再投資することも再確認した。

 次回の会合は9月8日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社