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金融・経済ニュース

英・EUのFTA交渉は漁業権問題で難航―合意なきEU離脱の公算大(2)

2020-12-24 14:09:00.0

 英国とEU(欧州連合)のFTA(自由貿易協定)など通商協議が大詰めを迎える中、ジョンソン首相は12月21日、EUのフォンデアライエン欧州委員長と電話会談した。その際、ジョンソン首相は、「EUの漁獲枠の削減率に対する要求を35%に引き下げた」(同日付英紙ガーディアン)が、EUは25%を主張して譲らず、強気姿勢を崩していない。

 英国のメイ前首相の特別補佐官だったラウル・ルパレル氏は英政治情報サイト「ポリティコ(Politico)ヨーロッパ」の12月21日付コラムで、「独立した第三者の仲裁機関がEUの漁獲量の減少で生じる経済的損失を算定し、それに見合う額を漁業以外の他の分野で、EUが英国から関税の形で徴収する案が考えられる」と指摘した。

 ジョンソン政権を支える与党・保守党のウィリアム・ヘイグ元党首はテレグラフ紙の11月30日付コラムで、「ノーディール・ブレグジット(合意なしのEU離脱)による英国経済への打撃は新型コロナウイルスの感染よりも大きい。特に、EUが英国の輸出品に高率な関税を適用すれば、自動車セクターや農業で英国は打撃を受ける。反対にEUも打撃を受ける」とした。また、「ノーディールになれば、EUとすでに合意しているEU離脱協定にある北アイルランド・プロトコルが英国の国内市場法によって書き直され、無効にされる可能性があるため、(国際法違反をめぐり訴訟合戦になるなどの)問題が引き起こされるだろう」とも警告する。

 北アイルランド・プロトコルでは、EU離脱後、英国連邦を構成する北アイルランドには英国とは異なる規制が適用される。農業や環境、国の輸出補助金などのEUの法律が適用され、4年間(最大8年まで延長可能)はEU市場に残ることになる。その結果、北アイルランドと英国本国との間の貿易に対し、通関(関税)手続きが行われるため、北アイルランドと英国本国との一体性が崩れる。ジョンソン首相が9月に発表した国内市場法案は英国本土と北アイルランドを隔てるアイリッシュ海に国境を作ることを阻止する、法的なセーフティーネットとなっている。

 ただ、国内市場法案に盛り込まれていた、北アイルランド・プロトコルの書き直し条項はEUが国際法違反だとして削除を強く要求したため、結局、12月8日に問題の条項の削除で合意した。これにより、北アイルランドと英国本土との貿易については、EUが農畜産物とその加工品、医薬品、冷凍食品などの食品加工品をスーパーに供給する場合、国境検査が行われるほか、EUの国家補助金ルールが適用されることになった。

 英小売協会(BRC)のヘレン・ディキンソン専務理事は、「ノーディールになった場合、EUから輸入される食品にかかる関税は30億ポンド(約4200億円)以上増えるため、21年にはこの関税増加分を消費者に価格転換せざるを得ず、食品価格が上昇する」(12月13日付の英紙ガーディアン)と見ている。ヘイグ氏も、「英国は21年1月1日からEUを離脱し、主権を回復する。しかし、ジョンソン首相にとっても英国にとっても本当の試練はこれから始まる。試練とはEU離脱で国民の間に動揺が広がり、スーパーで買いだめの混乱やサプライチェーン、物流の寸断を防ぐことだ」と警鐘を鳴らす。

提供:モーニングスター社