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英EU離脱協定案、英議会での批准困難―メイ政権退陣の可能性高まる
2018-11-28 12:45:00.0
英国のEU(欧州連合)離脱協定案の骨子の1つ<移行期間終了半年前にあたる20年7月に同条項を見直して自由貿易協定の締結か、国境警備に関するハードボーダー回避策を盛り込むバックストップオプション条項を適用するか、移行期間を21年12月まで1年間延長するか、を決める>案は、EU離脱後も北アイルランドにEUルールを合致させることでバックストップオプション条項の見直し(修正)を可能にする「レビューメカニズム」と言われ、メイ英首相がアイルランド共和国のレオ・バラッカー首相との電話会談で提案した内容と同じだ。
もしバックストップ条項が北アイルランド国境に適用されれば、今度は北アイルランドと英国本国を隔てるアイリッシュ海に国境を築くことになり、事実上の国土分断、北アイルランドのEU隷属を意味することから、レビューメカニズムを導入することにより「適用は時限にすべき」と主張するEU懐疑派の反対を抑えることを狙ったメイ首相の“苦肉の策”だった。
ただ、EUはメイ首相のレビューメカニズムに対しては、内容の修正に応じても英国にバックストップを一方的に終了する権限は認めない考えで、協議は平行線になっていた。
一方、もう1つの骨子<バックストップ条項打ち切りの判断は英国とEU、第三者からなる独立した仲裁機関に委ねる>については、ジェレミー・ハント英外相が「明確にバックストップを終了できるメカニズムがなければ、レビューメカニズム案はEU懐疑派の反対で議会承認を得ることはできない」と指摘している。
バックストップは、英国がEUと包括的な貿易協定を結べない場合、移行期間終了後(20年12月末)の21年3月から北アイルランド国境に適用されることになっている。しかし、テレグラフ紙は11月8日付で、バックストップオプションが英国全体に適用される見通しを報じた。これは与党・保守党のEU懐疑派を震撼させるには十分だった。政府がバックストップを恒久的なものにしない案を策定するといっても、事実上、恒久化される懸念が残るからだ。
これに輪をかけて、EU懐疑派だけでなく、今度はメイ政権を支える北アイルランドの連立与党・民主ユニオニスト党(DUP)を激怒させたのが、メイ首相の“二階建て”バックストップ案と呼ばれる新提案だった。これは21年12月末までの時限で英国全体にバックストップ条項(2階部分)を適用するが、期限までにEUとの包括的な自由貿易協定を締結できない場合、元のバックストップ条項(1階部分)を北アイルランドだけにEUの関税ルールを適用するという、いわば屋上屋を重ねる官僚的発想で、DUPのアーリーン・フォスター党首は、「メイ首相はアイリッシュ海に国境を設けないという約束を破った」と激怒し、EUと合意しても議会を通させないと断言した。
結局、“二階建て”バックストップ案は消えたが、その代わり、「バックストップ条項は(北アイルランド単独ではなく)英国全体に無期限に適用されるというEU懐疑派にとっては最悪の内容となっている。
また、欧州懐疑派のジョン・ロングワース元英国商工会議所専務理事は11月9日付テレグラフ紙で、「保守党の綱領に背き民主主義を裏切ったメイ首相は党から追われ新内閣、新首相、新政策にとって代わられる」と政権存続の危機に直面すると予想している。
さらに、離脱協定案では英国が関税同盟に一時的にでも残れば、EUは英国の国益に深く関わる英国の領海内での漁業権行使をこれまで通り認めるよう要求しており、離脱協定案がすんなり議会で批准される可能性は極めて低くなった。
提供:モーニングスター社




