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英EU離脱協議、ノーディールの公算大との見方が相次ぐ
2018-09-07 09:40:00.0
メイ英首相がEU(欧州連合)側に提示した離脱方針白書を、EU首席交渉官のミシェル・バルニエ氏が拒否。協議は強硬離脱となるノーディールに終わる公算が大きくなった。
ノーディールの見通しをめぐっては、ロンドンの大和キャピタル・マーケッツ・ヨーロッパのエコノミスト、ダーシーニ・デービッド氏も7月24日の顧客向けリポートで、「4つの自由のうち、人の移動の自由だけを認めない離脱方針白書をEUが修正する考えはなく、イエスかノーかの選択となる」とした。英国内で離脱強硬派の反対が強いことを考えると、メイ英首相がこれ以上譲歩する余地もないという。その上で、デービッド氏は、「EUとの唯一のディールは北アイルランドだけがEU単一市場に残り、英国は単一市場を去るが、EU関税同盟には残るという案だ」と推測する。
英紙フィナンシャル・タイムズのチーフ・コメンテーター、マーチン・ウォルフ氏は7月30日付コラムで、「メイ首相が白書よりももっとEUに譲歩した内容のソフトブレグジット(穏健離脱)で合意する可能性が最も高い」とみる。しかし、その場合でも英国議会がその合意にノーと言えば、クリフエッジ(即時離脱)となる。解散総選挙になる可能性もあるが、仮に英国で新政権が誕生したとしてもEUは一度決まった合意を再協議しない。結局、北アイルランドだけがEUに残留し、他の英国地域はEUとは遠い関係になるという選択肢を要求してくるだろうがこの要求を英政府は受け入れられず、結局、ノーディールに終わる可能性が高いとした。
また、イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁も8月3日、英放送局BBCのラジオ番組のインタビューで、「英国は不快に感じるほどのノーディールの高リスクに直面している」と述べている。この発言でポンドが対ドルで1.3ドルを割り込み、11カ月ぶり安値まで急落。今もポンド安の後遺症が続いている。
しかし、ノーディールとなっても英国の金融界への影響は軽微という見方もある。英中銀のウッズ副総裁は7月25日の米経済通信社ブルームバーグのインタビューで、英国に拠点を持つ銀行や保険会社などの金融機関がEU離脱でスタッフを欧州に移籍する規模について、「当初、5000人−1万人の移籍が起こると予想していたが、実際には5000人か、それをやや下回ると思う」と述べた。想定より影響は軽微で、仮にロンドンの金融街から5000人流出したとしても金融界全体のわずか0.5%以下だという。また、カーニー総裁も7月17日、議会の公聴会で、「ノーディールになれば英国よりもEUの金融システムの方が酷い目にあう。英国はEUの金庫番として金融サービスを提供しているので、間違いなく、欧州の資本市場の担保能力が低下し崩壊状態となり、しばらくは適応できないだろう」と警告した。
ノーディールで最も打撃を受けるであろうロンドンの金融街では、バルニエ氏の離脱方針白書の拒否発言を受けて、英国の金融行為監督機構(FCA)のデルファス常務理事(国際担当)が7月19日の講演会でノーディールの事態を想定した対応策の策定に着手したことを明らかにしている。また、政府はノーディールとなっても、EUで製造された医薬品と自動車部品、化学品だけはこれまで通り遅延なく円滑に輸入できるようにするための準備に入った。離脱協議は交渉期限の10月EUサミットに向け正念場を迎える。
提供:モーニングスター社




