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メイ英首相の離脱方針白書はEUで否決される公算大―国民に離脱の是非を問う再投票か
2018-08-03 12:58:00.0
EU(欧州連合)離脱協議で英国が陥る危険性とは何か。英紙デイリー・テレグラフで30年超のベテラン国際経済担当エディターのアンブローズ・エバンス・プリチャード氏はメイ英首相の離脱方針白書(7月12日公表)について14の問題点を挙げたが、ここでは一部の紹介にとどめる。
●英国とEUは財(製品等)の貿易で共通ルールに従うとしているが、すなわちEUルールに従うことになる。
●英国は環境と雇用、社会政策、消費者保護、国庫補助(保護貿易主義)、市場競争の分野でEUの法律に恒久的に従う。
●貿易などの分野に関する紛争処理は新設される英EUの合同委員会で対応するが、最終的には欧州司法裁判所(ECJ)に送付される。これは欧州司法裁判所(ECJ)が最高裁判所として英国の法律や社会行動に関するトラブルを優先的に統治することを意味する。
●欧州司法裁判所(ECJ)の権限は財と農産物に対する共通ルールに関するトラブルと、摩擦のない貿易を実現するために必要とされる分野をカバーするとしているが、ECJの権限は輸出産業に限定されない。
●英国はEUの17万件もの法規範からなる指令や規則の大半に署名することになる。これらの法規範の一部は仮想通貨を支えるブロックチェーン(分散型デジタル台帳)技術などの新技術と互換性のないものが含まれているため、ブロックチェーン技術の振興を損なう可能性がある。
●「英国が将来、EU規則とは違う新しい法律を制定することができる」としているが、実際にはスイスの例のように、14年2月の国民投票でスイスがEUの4原則の一つである「人の移動の自由」に反対し移民制限を決定した際、また、17年2月の国民投票でEUの法人税改革を拒否した際もEUはスイスを税制に対し非協力的な国と認定し、EU市場へのアクセスを制限したため、結局、スイスはEUに屈服させられている。
●EUルールを受け入れることによって、英国はEUの支配から逃れることができず、EUに次いで貿易額が大きい米国やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)などEU以外の外国との意味のある貿易協定を結ぶチャンスが大幅に低下することになる。
●離脱後の金融サービス(英国でEUの顧客の1.4兆ポンドの資産が運用されている)の取り扱いに関する新しい経済協定や新しい金融市場規制に関する協定を結ぶとしている。英国の金融機関がEUにある子会社に従業員をシフトしないで済むためには規則の同等性の適用範囲をもっと拡大できるかが焦点となる。
●英国は欧州閣僚理事会での拒否権行使の権利を奪われる一方で、EUが引き続き英国の諸政策や欧州議会の英国議員、ECJの英国裁判官をコントロールすることを認めている。
プリチャード氏はこのように問題点を指摘した。
一方、英与党・保守党の最強の離脱派グループで60人の陣傘議員からなるブレグジット欧州調査グループのジェイコブ・リースモッグ代表は同16日、離脱方針白書の基になったチェッカーズ合意を潰すため、政府が提出予定の貿易法案に反対する4本の修正案を下院に提出。これを可決してしまったことはメイ首相にとって最大の誤算となった。
これは修正案のうち、「(北アイルランドと英国本土を隔てる)アイリッシュ海に関税検問所を設けることを違法にする」というもので、この修正案は、EU離脱後、北アイルランドにEUルールを合致させることでハードボーダーを避けるという解決方法(バックストップオプション条項)を不可能にする。この条項に従えば北アイルランドにEUルールを適用すれば、今度は北アイルランドと英国本土の間にボーダーを設けなければならなくなるが、ボーダーを設けることが違法になれば、南北アイルランドにEUルールを適用できなくなるという論法だ。
英国は7月26日、この白書をEUに提示したが、その結果、ディールになっても、また、ノーディールになっても英国の議会ではいずれの最終合意も否決される可能性が高い。そうなれば、離脱の是非を改めて問う議会解散・総選挙か、2度目の国民投票を行うかの2者択一となる公算が大きい。
提供:モーニングスター社




