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メイ英首相のチェッカーズ合意を支持したEU離脱派の現実主義者らは“穏健離脱”を志向
2018-08-02 11:19:00.0
英国のデービッド・デービスEU離脱担当相とボリス・ジョンソン外相が7月8−9日に相次いで辞任したことについて、EU(欧州連合)圏の駐在外交官らは、英政権内でEU離脱派に勝ち目がないと判断して“沈没船から逃げたネズミ”に例えて嘲笑した。
ただ、離脱派の真の巻き返しはこれからだ。英与党・保守党の最強の離脱派グループで60人の陣傘議員からなるブレグジット欧州調査グループのジェイコブ・リースモッグ代表は今後、メイ英首相のEU離脱方針を決めたチェッカーズ合意(7月6日)を潰すため、政府が提出予定の貿易法案に反対する4本の修正案を下院に提出する方針を表明したからだ。
チェッカーズ合意に反対してメイ首相に辞意を伝えたマリア・コールフィールド前保守党副幹事長も英紙デイリー・テレグラフ紙への寄稿文で、「国民投票の結果を裏切った政府に対し、離脱派議員らはこのまま無視された徒党として黙ってはいない」と意気込んだ。ただ、当時は議会が7月23日からの夏休み休会を控えていたため、メイ首相は休会が終わる9月5日までは安泰というのが大方の見方だった。
最大野党・労働党のアンドリュー・アドニス議員(ゴードン・ブラウン政権下で元運輸相)は7月9日、英紙ガーディアンで、「政治の混乱がメイ首相を存続させる唯一の方法だ」と言い切った。英国が関税と貿易でEUと合意するには、ノルウェーのようにEU非加盟国がEUとEEA(欧州経済領域)協定を結び、EU単一市場にアクセスする方法に向かわない限り不可能とみられている。しかし、同氏は、「離脱派はノルウェー方式には反対する。したがって、メイ首相が生き残る唯一の方法は保守党の分裂が絶えず続くことしかない」という見立てだ。
ただ、メイ首相が馬脚を現したかどうかについては別の見方もある。保守党の重鎮ウィリアム・ヘイグ元党首は同9日のテレグラフ紙のコラムで、現実主義者とロマン主義者の違いだと説明する。「離脱派のマイケル・ゴーブ環境相のように最終的にメイ首相のチェッカーズ合意を支持した現実主義者は、議会の大半がソフトブレグジット(穏健離脱)を支持しているという現実や北アイルランド国境問題、企業の海外流出懸念という3つの制約の中で唯一考えられる次善の策がチェッカーズ合意だった」という。「他方、ロマン主義者はチェッカーズ合意に反対しても代替案を持っておらず、これら3つの制約をクリアできない。デービス氏は全く妥協しなかったわけではないが、メイ首相や政府がEUに妥協しすぎたことが問題だった」と話す。
その上で、ヘイグ氏はデービス氏やジョンソン氏が辞任し、保守党議員がメイ首相の不信任(更迭)を求めて党首選挙になった場合、離脱派が望むようなブレグジットになる確率はゼロだという。つまり、2回目の国民投票を実施するか、EU交渉での英国の立場がさらに弱まるだけになる可能性があるという。また、「EU合意がメイ首相のチェッカーズ合意と同じようなものになれば、保守党はEUとの最終合意に反対投票するだろうか。EUがよほどひどい非妥協の姿勢を示さない限りノーディールの合意は認めないので、結局、英国はEU残留か、またはEU離脱の時期を先延ばしするかのいずれかになる」と予想している。
英政府は7月12日、EUとの将来の関係、主として貿易協議に臨む英国の戦略方針をまとめた離脱方針白書を公表した。これはチェッカーズ合意を柱にしたもの。貿易やデジタル産業、英国民のEU在留とEU市民の英国在留の権利、「人の移動の自由」の終了などを含む経済パートナーシップと国家安全保障や外交などのパートナーシップ、データ保護や機密情報、漁業などのその他分野のパートナーシップ、紛争処理などの制度的取り決めの4章で構成され、全98ページとなっている。
白書の発表を受けた英国メディアの大方の反応は、今後、問題だらけの白書をめぐって保守党内が離脱派と残留派に分断され内戦は避けられないというものだ。また、仮に離脱協議でメイ首相の懸命な説得が功を奏しEUが白書通りか、またはそれ以上の譲歩を英国から引き出し最終合意(ディール)したとしても、議会で保守党の離脱派議員に加えて、野党の労働党や自民党などがこぞって反対投票に回れば、結果的にノーディールに終わる公算が強まるとみられている。
提供:モーニングスター社




