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金融・経済ニュース

メイ英首相、EU離脱協議の戦略決定で“EU残留の馬脚”現す

2018-08-01 13:51:00.0

 英EU(欧州連合)離脱協議で現場指揮を執っていたデービッド・デービスEU離脱担当相が貿易協定を含む「将来のEUとの関係」(第2段階協議)に臨む政府の戦略方針について閣内統一を図ったチェッカーズ合意(7月6日)に猛反対して、合意のわずか2日後の7月8日、突然辞意を表明し英政界に激震が走った。同氏の辞任で見えてきたのは、メイ英首相はこれまで巧みに離脱派と残留派のパワーバランスを保ってきたが、結局、もともと残留派のメイ英首相が馬脚を現したことだ。

 チェッカーズ合意とは、チェッカーズの首相別邸で決まったのでこう呼ばれている。この合意を基に離脱方針白書が策定され、政府はすでにEU側にその内容を提示しているが、過去にもメイ英首相はEU離脱協議の戦略を決定するたびごとに徐々に閣内で離脱派を追い込み始めていた。事実、メイ英首相はベルギー・ブリュッセルのEU本部で行われる離脱交渉でもデービス氏を遠ざけ、政府高官のオリバー・ロビンズ氏(EU離脱担当省の事務次官)を重用し始めた。かつて「ノーディール(自由貿易協定も何もかも合意できない強硬離脱)も辞さず」と豪語していたメイ英首相の強面はすっかり消え、今回のチェッカーズ合意で完全にソフトブレグジット(穏健離脱)に舵を切ったのだ。

 デービス氏辞任に呼応し、重要閣僚で同氏とともに離脱派をけん引していたボリス・ジョンソン外相(当時)も翌日の7月9日、「ブレグジットの夢は破れた。チェッカーズ合意は“big turd”(「糞」をいくら磨いてもダメなものは良くならないというやゆ表現)だ」と言い放って辞表を提出しメイ英政権打倒の道を選択した。だが、保守党の重鎮マイケル・ヘーゼルタイン元副首相は7月9日、英BBC放送に対し、「党首選になれば他に候補が見つからないのでメイ英首相は再選されるだろう」と指摘、議会政治の閉塞感も漂い始めた。

 デービス氏の腹心でともに辞任したスティーブ・ベーカー氏(離脱担当副大臣)は7月15日、英有力紙デイリー・テレグラフのインタビューで、チェッカーズ合意について、「メイ英首相は“体制派のエリート”(ロビンズ氏)と共謀し、チェッカーズ合意が以前よりずっとソフトブレグジット(穏健離脱)寄りになるよう陰謀を企てた」と暴露した。裏を返せば、メイ英首相らは最初からEU側とソフトブレグジットの“出来レース”を演じていたことになる。2年前の16年6月、EU離脱を決めた国民投票は一体何だったのかという話だ。

 離脱派を代表するデービス氏の辞任は残留派のメイ英首相との抗争に負けたことを意味するが、英メディアでは同氏の辞任は予想通りで時間の問題だったとみていた。テレグラフ紙は、「離脱交渉はこれまで数百時間かけられたが、デービス氏は今年、わずか4時間しか交渉にいなかった」と暴露した。デービス氏は17年6月からメイ英首相に疎んじられ、3月からは事実上交渉から外されていたという。デービス氏はメイ英首相に辞意を伝えた7月8日付の書簡で、「国益とはEU離脱省の大臣があなた(メイ英首相)の交渉戦術に渋々従う一兵卒となるだけでなく信奉者にもなるべきだと言っているように聞こえる」と指摘したように、交渉責任者としての立場は完全に無視されていたからだ。

 しかし、デービス氏は辞任の最たる理由は、「英EUの共通ルールに従うという政策は英国の経済統制の大半をEUに引き渡すもので、現実として英国法に対する統制をEUから取り戻すことにならないと判断したことだ」と述べており、EUの関税同盟と単一市場から去るという国民投票の使命を果たす可能性がなくなった上に、メイ英首相の交渉戦術ではEUからさらなる譲歩に迫られるという国益上の判断だったしている。

 今回の辞任劇についてEUの反応は薄い。EU加盟27カ国からEU本部に派遣されている外交官らは、「離脱交渉は英国の政府高官ロビンズ氏が対応し、デービス氏は交渉から外されていたので、影響は全くない」という見方だ。メイ英首相は後任にドミニク・ラーブ住宅担当閣外相を起用したが、EUは誰が離脱担当相になっても変わらないと、高を括っている。19年3月の離脱日から離脱合意の加盟国批准に要する時間を逆算すると、交渉合意期限は18年10月となるが、EUは清々粛々と交渉を続ける。

提供:モーニングスター社