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英国、移行期間後も数年間、EU関税同盟の期限延長に方針転換
2018-06-13 10:23:00.0
英紙デイリー・テレグラフは5月16日付電子版で、「メイ英首相は19年3月末のEU離脱後の激変緩和に向けた20年12月末の移行期間終了後も一定期間、EU(欧州連合)の関税同盟に残る用意があると伝える」というスクープ記事を報じた。
これはEU加盟国である南アイルランドと英国領の北アイルランドとの国境問題の解決をめぐって、EU残留支持派と離脱支持派に分断された閣内の意見を統一するため、メイ英首相が開催した閣僚会議で決まったものだが、同時に、EUが求めているバックストップオプション条項(EU離脱後も北アイルランドにEU単一市場・関税同盟ルールを合致させることでハードボーダーを避けるという解決方法)に代わる新バックストップ案といわれるものだ。英国は近く同案をEUに提示するとみられる。
しかし、この報道を受けて、英EU離脱派は関税同盟の期限延長は英国が恒久的に離脱できなくなるのではないかとの懸念を募らせている。保守党の60人の陣傘議員からなるブレグジット欧州調査グループのジェイコブ・リースモッグ代表もその一人だ。同氏は5月16日付のテレグラフ紙で、「政府が退却姿勢を示せば、ズルズルと関税同盟に居残り続けるようになる。われわれは明白な最終目標(離脱)から離脱時期の延長(移行期間)、そしてさらに終わりがない延長に向かっている」と嘆く。
南北アイルランド国境問題を解決する新バックストップ案は2つの案からなる。一つは、英国がEUに代わってEU向け製品への関税を徴収するという関税パートナーシップ案で、メイ英首相とソフトブレグジット(穏健離脱)派が支持している。もう一つは、センサー搭載カメラやGPS(全地球測位システム)などのITを駆使して国境検査や関税手続きを最大限簡素化するマキシム・ファシリテーション案で、ハードブレグジット(強硬離脱)派が主張している。
これらの案は南北アイルランド国境問題にとどまらず、広くEUとの将来の貿易関係の在り方と密接に関わっている。ただ、両案とも解決すべき技術的な問題があり完成まで3−5年はかかることから、23年までEU関税同盟に残る必要がある。当初、離脱派は関税同盟に残れば他国との貿易協議ができなくなるとして強く反対していたが、最終的にはEUの関税同盟ルールに従うが、単一市場ルールには従わないという妥協でしぶしぶ了承している。
しかし、移行期間終了後の数年間、関税同盟にだけ残り、単一市場から離脱し「ヒト、モノ、カネ、サービスの移動の自由」というEU規制を避けるという都合の良い提案がEUに受け入れられるとは考えにくい。また、歳入関税庁(HMRC)は従来の関税制度に代わってマキシム案を採用すると、企業は毎年、最大200億ポンドの負担を背負いこむことになる、と試算したことから経済界は猛反発しているという問題もある。
提供:モーニングスター社




