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金融・経済ニュース

イタリアのユーロ圏離脱には国民投票制度が必要―英保守党重鎮の見解

2018-05-29 12:13:00.0

 イタリアのマッタレッラ大統領は27日、五つ星運動とリーガ(同盟、旧・北部同盟)の連立与党によるユーロ離脱を阻止するため、与党が指名したユーロ懐疑派エコノミストであるパオロ・サボーナ氏の経済相就任に拒否権を行使した。与党陣営は過半数の議席を保有する議会で大統領の弾劾・罷免(単純過半数で大統領を罷免できる)を目指す方針だが、マッタレッラ大統領は翌28日、直ちにIMF(国際通貨基金)の元高官のコッタレッリ氏を招へいし、組閣を準備するよう指示した。

 もし新内閣が誕生しても上下両院で過半数を占める与党が信任しないため短命政権に終わり、9月か10月には解散総選挙に向かうとみられている。再選挙で与党が勝利しても大統領が変わらなければ同じことの繰り返しとなり政治混乱は続く。ただ、再選挙で与党、特に3月総選挙で第1党となったポピュリズム(大衆迎合主義)政党の五つ星運動の支持基盤がさらに強化されユーロ離脱ムードが続く可能性もある。

 英保守党の重鎮、ウィリアム・ヘイグ氏は寄稿文で、「イタリアがユーロ圏から離脱するには、政治的な障害が大きい。その一つは、(ユーロ加盟を規定するマーストリヒト条約などの)国際条約の是非を問う国民投票制度がイタリアにはないためだ。しかし、それを可能にする政権がイタリアにできたことは大きな一歩だ」、「リーガのサルビーニ党首がユーロは間違いだと主張してもそれは間違っていると反論されるかもしれないが、(国民投票で)イタリア国民がユーロには多くの問題があるといえばそれは正論になる」などと持論を展開している。

 ヘイグ氏は、「イタリアの新政府によるユーロ圏離脱の動きが英国の複雑なブレグジット交渉を助けることにはならないだろう」としているものの、「EU(欧州連合)がイタリアの新政権に脅威を感じれば感じるほど、EUが存在する根拠が弱まる。英国のEU離脱は1回限りの出来事で終わるのではなく、EUが徐々に長い時間をかけて解体していく始まりとなる」と結論付けている。

 元々、ヘイグ氏はEU批判の急先鋒として知られる。同氏は17年8月28日付のテレグラフ紙への寄稿文でもEUが英国との離脱協議で一切妥協せず、意図的に協議を長引かせていることに憤慨し、「英国のEU離脱交渉の成功を妨げているのは、政策を変更しようとしないEUの伝統的な柔軟性の欠如だ。英国のEU離脱の大きな理由の一つがEUの柔軟性の欠如だった」と指摘。その上で、「(09年に始まった)ギリシャ債務危機の際、問題解決に取り組んだギリシャのバルファキス財務相(当時)が後日談として、ユーロ圏各国の財務相からECB(欧州中央銀行)総裁、そしてドイツのメルケル首相まで次々とたらい回しにされ、結局、EUの誰と交渉すれば良いのか分からなくなった。また、EUでは誰も責任を持って政策を変更しようとしない非妥協性の壁に直面した」と痛烈に批判している。

 現段階では、イタリアの両党はギリシャの急進左派連合「シリザ党」のように最終的には政策を撤回し、EUルールに従って、財政支出の削減やユーロ圏にとどまるようになるとの見方が少なくない。

 しかし、ヘイグ氏はキャメロン政権当時の外相(10年5月−14年7月)としての経験から、「既存の古い政党や金融市場を支配するエリート層に属さないイタリア国民は度を越した制御不能の移民流入に激怒している。欧州の一部の選挙や英国のEU離脱の是非を問う国民投票(16年6月)で見られたように、やがてそうした国民の態度にも変化が現れてくる」との見方を示し、「イタリアの2大政党による連立政権はギリシャの単独政党と違って、お互いに競って政治の信頼性を追求するので、そう簡単には反EUの旗は降ろさない」と言い切る。

 イタリアのユーロ圏離脱の動きをしばらく見定める必要がありそうだ。

提供:モーニングスター社