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英国のEU離脱を占う―“ノーディール離脱は最悪ではない”という覚悟が活路となるか(1)
2018-02-05 14:13:00.0
貿易交渉を主導するメイ英首相にとって、英議会で新しい悩みの種が浮上した。英下院が17年12月14日、EU(欧州連合)残留を支持する最大野党の労働党と野党2位の自民党、さらには、その後メイ英首相によって解任された保守党幹部のスティーブン・ハモンド幹事長代理ら与党・保守党の造反議員11人がグレート・リピール法案(欧州共同体法廃止法案)の修正案を賛成309票対反対305票の僅差で可決した。修正案はメイ英政権がEUとの離脱交渉で決まった最終合意に議会の拒否権を認めるものだ。
この修正案が今後の離脱交渉にどんな意味を持つのか。デービスEU離脱担当相は議会での答弁で、「EUとの最終合意を法文化する『EU離脱合意・実施条約』に盛り込まれるどんな合意事項も議会の同意を得る」と約束した上で、「同意は容認するか拒否するかの2者択一の形で行われる」とし、議会の同意のタイミングについても「欧州議会が最終合意の採決を行う前」と説明した。これは今後、メイ英首相は目の前に議会の拒否権がちらつく中で、EUと離脱交渉に臨まなければならず、納得できる合意を得るのは難しくなることを意味する。EUと合意しても議会の承認が得られず法的拘束力がもてなければ、EU側は反発し協議は進まなくなるからだ。
離脱支持派のドミニク・ラーブ司法相(当時)は、「修正案は議会に対し、納得できるような合意が得られるまでEUと無理やり再協議させる機会を与える。つまり、EUに屈するような悪条件の『バッドディール』でも英国は交渉を打ち切れないとEUに思われてしまう」と困惑する。
バッドディールは離脱派にとって「バッド」でも、残留支持派やソフトブレグジット(穏健離脱)派にとってはグッドディールだ。穏健離脱派が意に沿わない合意に拒否権を乱発するようになれば、交渉が滞る恐れがある。修正案が可決されたことで、英国のEU離脱はメイ英首相や強硬離脱派が最も嫌うバッドディールになりかねない。EU側も、英国内で立法化の見通しが立たないような合意を英国と結ぶことには躊躇(ちゅうちょ)することになるはずだ。
12月14日、離脱交渉が第2段階の貿易協定に移ることを正式に決めるEU加盟27カ国の首脳会議が始まり、翌15日に加盟国首脳の承認が得られ英国はようやく交渉を前進させることができた。しかし、英紙デイリー・テレグラフは12月15日付で、「EU加盟各国の首脳らは今後、英政府と合意したことが英国議会によって覆され、離脱交渉が何も合意できないまま強行的に離脱する『ノーディール』に終わる可能性が高まった」と懸念を示した。また、同紙は、「メイ英首相はベストな合意を目指す交渉にあてる時間を短縮し、議会の採決に時間を割かなければならなくなる。EUは再交渉には応じないので、議会が拒否権を行使すれば、英国はEUとノーディールに終わり強硬離脱することになる」と指摘した。
ただ、EU加盟国のマルタ共和国のジョセフ・ムスカット首相は12月15日、英放送スカイニュースのインタビューで、「英議会が最終合意案に拒否権を行使すれば、我々(EU)は離脱交渉を喜んで延期する。我々はいま英国とソフトブレグジットに向かって進んでいる。はっきりしているのはより賢明なアプローチ、つまり、「規制やルールの合致(regulatory alignment)というアプローチで一つになってきていることだ」と述べ、必ずしもノーディールにはならないという。しかし、その言葉通りになるかは疑問だ。メイ英首相はEUに屈するような穏健離脱は望まないからだ。
(2)へつづく
提供:モーニングスター社




