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メイ英首相、EU首脳から離脱協議“前進”の言質取るも依然として前途多難
2017-10-31 10:13:00.0
メイ英首相は10月16日、膠着しているEU(欧州連合)離脱協議を前進させるため、ベルギー・ブリュッセルにあるEU本部を電撃訪問し、EUの行政執行機関であるEC(欧州委員会)のジャン・クロード・ユンケル委員長やドナルド・トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)、ブレグジット首席交渉官であるミシェル・バルニエ氏に直談判する一方で、マクロン仏大統領とメルケル独首相らとも電話会談を行った。
電撃訪問の表向きの理由はEU執行部の説得だが、真の狙いはメルケル独首相らユーロ圏盟主国のトップの政治決断を促し協議を前進させることだった。6月の英総選挙で保守党が単独過半数を失い深い負い目があるメイ英首相にとって、このまま離脱協議で自由貿易協定の締結もできず何も合意が得られないという、“ノーディール”に終われば、英国内では与党・保守党内から厳しい批判を受けて22年の次期総選挙を戦えない。EU電撃訪問はそうしたメイ英首相の切羽詰まった政治状況を打破する意味も込められた行動だった。
結局、メイ英首相のEU電撃訪問については、メルケル独首相とトゥスク欧州理事会議長が10月19日のEU首脳会議後の会見で、「英国メディアは離脱協議が暗礁に乗り上げている、と大げさに書き立てているだけだ。離脱協議は(十分ではないが)前進している」と強調し、メイ英首相に花を持たせた。メイ英首相に“貸し”を作った格好だ。
しかし、その後、メイ英首相の電撃訪問を台無しにする“事件”が起きた。16日のメイ英首相とEU首脳との会談の模様について、ドイツの有力紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングが10月23日付で、「メイ英首相は16日のユンケル委員長との会談でEU首脳に助けを請うてきた。メイ英首相の目には深い皺が刻まれ憔悴しきった表情だった」と非公開で行われた会談にもかかわらず、ユンケル委員長の側近の話としてメイ英首相を辱めるような内容をリークしたのだ。
このリーク報道は、いかにメイ英首相が離脱協議をめぐって政治的に追い込まれているかを如実に表す。ユンケル委員長はこのリーク報道をすぐに否定した。同委員長の首席補佐官であるマーチン・セイマイヤー氏は、「離脱協議を妨害したい人物にはめられた」とリーク報道は事実無根としたが、EU離脱協議をめぐって水面下では激しい政治の駆け引きが進んでいることも物語る。
根本的にEU首脳はノーディールを望んでいない。それよりもEUの団結を維持するため、英国にEU離脱を断念させて元の鞘に戻したいという狙いがある。ユンケル委員長は10月24日の欧州議会で、「EUにはノーディールを望んでいる人たちの友人はいない」と演説した。英国とはノーディールを望んでいないと断言したのだ。これに呼応して、トゥスク欧州理事会議長も議会で、「EU協議がグッドディールか、ノーディールか、あるいはノーブレグジットかは英国次第だ」と述べ、暗に英国が離脱を中止することが可能だと強調している。
10月19−20日の2日間にわたったEU首脳会議で、離脱協議の次の段階である貿易協議に進むべきかどうかの是非については、次回12月中旬の首脳会議まで結論を持ち越すことで決着した。メルケル首相らEU首脳が「離脱協議は前進している」と発言した背景には、メイ英首相が手切れ金の金額について従来の200億ユーロ(約2.6兆円)の方針に対し柔軟な姿勢を示したことがある。英紙デイリー・メールは10月21日付で、EU幹部の話として、「英国が手切れ金を200億ユーロから約3倍の480億ポンド(約540億ユーロ=約7.1兆円)まで引き上げれば貿易協議に進むことが可能だ」と伝えた。ノーディールを回避するには、今後、メイ英首相がどこまで金額を引き上げられるかが焦点となってきた。
提供:モーニングスター社




