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金融・経済ニュース

英国のEU離脱交渉、暗礁に乗り上げる―EU高官と英EU離脱担当相の確執が深刻化

2017-09-20 09:32:00.0

 英国のEU(欧州連合)離脱協議が難航している最大の問題は、一切の妥協に応じようとしないEUの行き過ぎた官僚主義にある。そのEU官僚体制のトップに君臨して強権を揮っているのがジャン・クロード・ユンケルEC(欧州委員会)委員長だ。英紙デイリー・テレグラフは9月7日付電子版で、「EC議事録(7月12日会合分)によると、ユンケル委員長は28人のEC委員全員が揃った会合で、英国との協議が失敗に終わるリスクに直面しているのは、英国のデービッド・デービスEU離脱担当相が無能だからだと個人攻撃した。ユンケル氏はデービス氏のことを持続性・安定性に欠け、説明責任を果たせず、権限を持った交渉人とは思えないと言った」と伝えた。これには英国の欧州議員も一斉に反発し、ユンケル氏に怒りの矛先を向けた。いかにEUが嵩にかかって英国を攻めているかが分かる。

 その後、英政府は8月中旬、EU(欧州連合)離脱交渉に臨む「将来のEUとの貿易関係、特に関税同盟に関する交渉方針」を発表した。主な内容は、(1)10月からEUと自由貿易協定の交渉を開始する、(2)19年3月のEU離脱後に3年間を上限とする移行期間を設ける、(3)移行期間中に貿易・関税に関する新しい協定を結ぶ、(4)新協定が締結されるまで英国は離脱後も一時的にEUの単一市場と関税同盟の中にとどまる――というものだ。

 また、英政府は交渉方針の中で、EUとは今まで通りの関税同盟を継続するという提案とは別に代替案も示した。これは英国経由でEUを最終目的地とする、外国からの輸入品に対する通関手続きを簡素化し、英国からEUへの輸出が迅速に進むように英国がEUに代わって通関手続きを肩代わりする新しい関税同盟を締結するというもの。英国側はこれによって英国が最終地の輸入品には英国の関税率を適用でき、また、EUも最終地の輸入品にはEUの関税が適用できるメリットがある、とかなり積極的な内容となっている。

 しかし、ユンケル発言に見られたようにEUと英国の交渉に対する温度差は歴然としている。英国の積極的な交渉対応にもかかわらず、EU側の反応は依然として冷ややかだ。EUの報道官は匿名で8月15日の英テレビ局スカイニュースに対し、「英国の関税同盟に対する要望に留意するが、英国の秩序あるEU離脱に必要な条件(手切れ金の支払いやEU市民の在留権、アイルランド国境管理の3つの優先課題の解決)で十分な進展が見られなければ、英国と(自由貿易交渉など)将来関係について協議しない」と述べ、英政府の交渉提案には一瞥もくれなかった。

 欧州議会のブレグジット交渉代表であるヒー・フェルホフスタット議員も8月15日の自身のツイッターで、「英国がEUの関税同盟から抜けて、また戻るとか、目に見えない国境(関税手続きの簡素化や最小限の貿易規制などの関税取り決め)という提案は幻想だ」と突き放す。EUのミシェル・バルニエ首席交渉官も同日のツイッターで、「英国がEU加盟27カ国とEU市民の英国在留権と手切れ金支払い問題を早く解決すればするほど、関税同盟と将来関係について早く協議を開始することができる」と従来通りの主張を繰り返した。EUは英国には譲歩しない構えを崩さず、英国が期待する10月からの貿易交渉は、夢のまた夢に終わるのは必至の情勢だ。

 8月31日の3回目の離脱交渉の終了後に開かれた共同記者会見で、バルニエ首席交渉官は、「英国はEU関税同盟からの離脱を名残惜しんでいるようだ」と、おどけて見せた。これにはデービスEU離脱担当相も驚きを隠せず、「離脱と言ったら離脱だ」と語気を強めた。EUの対応はどこまでも辛らつだ。英紙デイリー・テレグラフは同日付電子版で、「結局、3回目の交渉でも1000億ユーロ(約13.4兆円)の手切れ金問題などで全く進展が見られなかった。英国の10月からの貿易協議開始の構想は絶望的だ」とさじを投げる。

提供:モーニングスター社