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モーニングスター年末特集=2016年原油見通し=WTI原油、供給過多続けば衝撃の10ドル台も(1)
2015-12-30 19:25:00.0
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物が12月14日、一時1バレル=34.53ドルを付け、09年2月以来の安値を付けリーマン・ショック後の安値32.40ドルに近づいた。1年半前には100ドル台で推移していたことを考えると驚くべき展開といえる。
<止まらない原油安>
WTI期近物の14年6月終値は105.37ドル。原油価格の急落はここから始まる。要因は多岐に渡るが、最大の理由は米国のシェール革命を受けた供給過剰だろう。従来は困難だった地下深くのシェール層から原油や天然ガスを大量に採掘する技術が21世紀に入り確立し、米国の原油生産が大幅に増加。この供給過剰に対しOPEC(石油輸出国機構)は減産を行わず、価格下落に拍車がかかった。
15年は14年下期の流れがそのまま続いた形だ。5−6月には売り方の買い戻しから60ドル台を回復する場面もあったが一時的。7月以降は再度売り方が優勢となった。特に原油安の流れを決定付けたのは12月4日のOPEC総会だ。価格下落に歯止めを掛けるためサウジアラビアが減産を提案するとの観測が流れていたが、結局日量3000万バレルの生産枠を維持。現状の生産枠を順守していない加盟国が多いなか、市場側はOPEC側(正確には盟主のサウジアラビア)がこうした流れを容認したと受け取り、一気に売り持ち高を増やす動きが多くなった。
<産油国はSWFの資産売りで対応>
OPEC加盟国の財政収支均衡原油価格は推定60−80ドル。ただ、今回の原油価格下落はOPEC、非OPECというくくりに関係なく産油国の財政を苦しくしている。例えばサウジアラビアが発表した15年実績見込みによると歳入は原油安から当初予算から15%減となり、16年予算の歳入はそこからさらに15%減とした。原油価格が上向かなければ歳入が一段と減少するのは間違いない。産油国はほぼ同じ状況に陥っており、財政赤字補てんの対策としてSWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)と言われる政府系ファンドが持つ外国証券の売却でしのいでいるようだ。
日本で今秋、サウジアラビア通貨庁(SAMA)が正体と見られる株主を持つ企業数が減少したことが話題となった。これは欧米も同様で、原油価格が崩れ始めて以降、世界各国の株価が下落したのはSWFの資金引き揚げが影響しているのは間違いない。IMF(国際通貨基金)によると産油国の株式や債券など金融資産は500兆円超。原油安が止まらなければ、SWFの金融資産売りは続くことになる。
需給面が一段と緩みそうな点も見逃せない。EU(欧州連合)などは年明けにもイランに対する制裁を解除する可能性が高い。イランは制裁が解除されれば原油輸出を日量100万バレル規模で拡大する方針を打ち出しており、価格競争に自信を見せる。加えて大規模エルニーニョ現象で北半球は暖冬。米原油在庫は過去最高水準に積み上がったまま減少する気配を見せない。
<あり得る10ドル台突入>
少なくとも中東の地政学リスクがよほど悪化しない限り、しばらく低調な流れに変化はないと見た方が無難。売り方の買い戻しで一時的に反発することはあってもリーマン・ショック後の安値32.40ドルを割り込み、20ドル台に突入することは時間の問題だろう。増産意欲の強いイラン、イラクが供給を拡大し、売り方が圧力を強めれば10ドル台さえあり得る。衝撃的な数値かもしれないが、02年2月には20ドルを割り込んでいたことを考えると非現実的な数字ではない。
(2)につづく
提供:モーニングスター社




