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<新興国eye>カンボジアとタイとの国境未画定海域、海上油田開発に期待
2022-09-09 10:30:00.0
タイのエネルギー規制委員会のコムグリッチ・タントラバニッチ事務局長は、タイとカンボジアの両国が、タイ湾にある長年係争中の重複主張海域(OCA)での海上ガス田・油田の共同開発に向けた明確な方向性を打ち出すことを提案したとのことです。タイでは、タイ湾岸産のガス量が減少し、発電用のLNGの追加輸入が必要になっている状況ですが、ウクライナ危機の影響で天然ガス・LNGの価格は暴騰しています。OCA開発によって、中長期的な天然ガスの安定供給を目指しているものと見られます。
カンボジアとタイの間では、タイ湾の海上の国境線が確定しておらず、双方が領有権を主張する2万6400平方キロメートルのOCAが存在しています。この海域では、石油・天然ガスが豊富に埋蔵されていると見られており、領有権問題を棚上げして、両国で共同開発を行う方向で協議が進められてきました。タイ側は、タクシン政権時代にこの考えに合意し、2001年にカンボジアと覚書の調印まで至りましたが、アピシット政権になってからこれを覆し、交渉は暗礁に乗り上げていました。2019年9月のASEANエネルギー大臣会合を契機に交渉再開に向けて動き始め、2019年末には早期の交渉再開で合意していましたが、新型コロナ問題の影響を受けて、交渉は延期されていました。
OCAからの原油産出量は、5億バレルとも見込まれており、天然ガスも豊富と見られます。タイとしても既存の海上油田・ガス田が早晩枯渇する可能性が高いことに加え、将来的には再生可能エネルギー等の台頭で石油やガスの需要が減少する恐れも出てきているため、重複主張海域の早期開発に前向きとなっているものと見られます。足元では新型コロナ終息を目前にして需要の増加が期待され、国際石油価格は90ドル前後に値を戻しており、新規油田開発には順風が吹いている状況であり、このタイミングを逃さず開発すべきとの大局観と見られます。
カンボジア領海の海上油田ブロックAについては、開発していたシンガポール系のクリスエナジーが破たんして開発は暗礁に乗り上げた形であり、隣接するOCAでの開発にカンボジア側でも期待が高まっています。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin−Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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