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<新興国eye>カンボジア経済アップデート2022、国際石油価格上昇の影響
2022-07-15 14:34:00.0
6月30日、世界銀行は「カンボジア経済アップデート2022年6月:石油価格ショックにさらされて」を発表しました。
カンボジアの成長率予測については、2020年のマイナス3.1%から、21年に3.0%(前回12月予測2.2%)、22年に4.5%(同4.5%)、23年に5.8%(同5.5%)、24年に6.6%と予測し、中期的には6%程度の成長を続けると見ています。新型コロナの影響は、特に観光業や建設・不動産業で深刻でしたが、縫製品や部品等の輸出や農業が堅調であったことから、経済回復の途上にあるとしています。特に、縫製品の輸出が25.1%増加した点や、コメの生産が好調で9.3%増の1220万トンに達したことを指摘しています。
他方、観光業はコロナ前までに戻るのは時間がかかると見ており、建設も認可額66.0%減(22年第1四半期)、セメント輸入71%減、鋼材輸入15.6%減等の状況から厳しい状態が続いていると見ています。なお、ワクチンの接種進展が経済の再開、国境の開放に繋がったとして「Withコロナ政策」を評価しています。
物価上昇率は、世界的な原油価格の上昇の影響を受けて今年は大きく上昇するとしています。21年は3.5%でしたが、22年は7.2%(前回予測3.8%)、23年は4.5%(同4.2%)、24年は4.0%と予測しています。石油製品を全量輸入しているカンボジアでは、ガソリン価格上昇から交通費、食料価格、肥料価格等に伝播してインフレが進行すると懸念しています。インフレは、消費の落ち込みや財政収支にも影響を与えると見ています。
対外収支は、石油輸入価格上昇の一方で輸出が健闘していることから、経常収支赤字(対GDP比)は21年の37.0%から、22年に24.7%、23年に18.6%、24年に14.9%と次第に落ち着いてくると予測しています。また、この赤字の大半は海外直接投資等で埋め合わされて、22年3月末の外貨準備は203億ドル(輸入の約8か月分)と非常に安定的なレベルを確保しています。ドルと現地通貨リエルの為替レートも、中央銀行の介入もあって1ドル=4100リエル近辺で安定的です。また、対外債務も「低リスク」であるとして問題ない状況としています。財政については、新型コロナ対策で歳出が増加したことから、赤字(対GDP比)は、21年に6.8%、22年に6.6%と若干高いレベルにあります。
貧困率は感染拡大前のレベルに戻っていません。しかし、22年3月現在で、約69万世帯(世帯の約17%)がカンボジア政府の現金支援総額6億8300万ドルを受領したことを評価しています。
カンボジア経済のリスクとしては、世界的な需要の不確実性、国際商品価格の高騰、新型コロナ変異種の感染拡大、民間貸付の急速な伸び、特に建設・不動産業への貸付集中等をあげています。対応する政策としては、柔軟な新型コロナ対策、国内需要の喚起(道路インフラ拡充、観光業への投資誘致等)、農産品の輸出振興、ビジネスコストの低減、インフレ対策としての為替安定等を提言しています。
なお、特別フォーカスとして、「新型コロナ後のサプライチェーン:物流コストの削減戦略」と題する調査報告も含まれています。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin−Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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