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新興国ニュース

<新興国eye>カンボジアのマイクロファイナンス―上限金利導入のインパクト

2021-06-04 17:23:00.0

 4月29日、IMF(国際通貨基金)は、「カンボジアにおける金融包摂に対する上限金利のインパクト」と題する報告書を発表しました。カンボジアでは、マイクロファイナンスが興隆し、機関数は04年の7機関から19年には10倍以上の82機関に増加しました。借入人数も10年と比較して19年には倍増以上の210万人・社となっています。

 こうした中で、脆弱な借入人を保護することを目的として、17年3月に上限金利(年18%)が導入されました。報告書では、こうした政策的な金利規制は、これまでの経験から、意図しないインパクトを発生させて金融市場に歪みをもたらす可能性があるとしています。

 調査結果によりますと、まず、マイクロファイナンス機関は、上限金利導入後、「手数料」収入を増大させています。新規貸付時の手数料などを増加させることにより、手数料収入は3倍に増加していました。特に、小規模機関は、この傾向が強いとしています。また、経費を削減するため、特に大規模機関では、1件当たりの貸付規模の拡大も見られました。

 上限金利の導入は、マイクロファイナンス機関の経費削減・合理化にも結び付いたとしています。最近のフィンテックの発展により、電子送金や手続きのオンライン化なども進められ、さらなる合理化も期待されます。

 マイクロファイナンス機関同士の健全な競争や小規模機関の統合などを通じて合理化を進める一方で、貸付審査の強化などによる貸付の健全性維持も借入人保護や貸付コストの削減に重要だと提言しています。

 IMFや世界銀行は、伝統的には、上限金利や政府金融機関による優遇金利などについて、自由な金融市場を歪めるものとして批判的でした。今回の報告書では、金利から「手数料」へのシフトが起きるといったインパクトを指摘する一方で、貸付総額や借入人数は増大を続けたと分析しており、客観的な結論となっていると見られます。新型コロナの影響が出る前の分析ではありますが、カンボジアのマイクロファイナンスの発展に役立つことが期待されます。

【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin−Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

提供:モーニングスター社