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<新興国eye>EU、カンボジアへの特恵関税制度の資格停止手続きに着手
2019-03-01 12:19:00.0
2月11日、欧州連合(EU)欧州委員会は、特恵関税制度(武器以外の全品目の無税化)であるEBA(Everything But Arms)のカンボジアの一時的資格停止に関する手続きに着手したと発表しました。これは、最終手段となる資格停止を直ちに発動するものではなく、まず、6カ月間の監視・対話強化期間があり、その後3カ月間のEUでのレポート作成期間を経て、12カ月後までに結論を出すこととなっています。停止が決定された場合は、最終決定後6カ月間の過渡期間を経て、18カ月後から特恵関税措置の対象外となります。
EUでは、18年以来、カンボジアの民主主義、労働者の権利、土地問題などについて、調査を実施し、カンボジア側とも対話を続けてきましたが、包括的な改善が必要だと主張しています。
これに対し、カンボジア側は18年の選挙終了後、さまざまな改善を行ってきたにも関わらず特恵関税制度の資格継続の条件が不明確、また、他にも条件を満たしていない後発開発国があるのにも関わらずカンボジアにだけ厳格な実行を求めるのは公平ではない、との見解を示し、反発を強めています。
在カンボジア米国大使館は、カンボジアに対し「経済制裁の発動を回避するため、真の民主主義を取り戻すべきだ」との声明を発表しました。
他方、カンボジア欧州商工会議所は、遺憾の意を表明し、「パートナーシップだけでなく、EUが過去20年間にわたって支援してきたカンボジアの社会経済基盤の底上げも危うくする」と警告しました。
特恵関税制度の資格停止は、カンボジア経済にとって最大の下ブレリスクであり、その顕在化は、カンボジアの主力産業である縫製業に大きな打撃を与えかねないものと見られます。また、特恵関税資格を喪失した場合、カンボジアの多くの脆弱な縫製労働者が貧困層に逆戻りする可能性も否定できません。
さらに、今回の手続き着手のニュースだけでも、カンボジアへの海外直接投資を萎縮させる大きな要因となるものとも見られます。これまで順調な成長を続けてきたカンボジアにとって、正念場ともいえる事態に至ったものと考えられ、今後のEUとカンボジア政府との対話とその結果が注目されます。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin−Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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