アナリストの視点

株安・債券安の中でファンドの平均保有期間伸びる、つみたてNISA対象の米国株式インデックスや国内株式アクティブがけん引

2022-11-10

 年初から世界的な株安、債券安に見舞われている2022年。インフレ高進とその対応のための各国の利上げ、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中国のゼロコロナ政策などを受けて景気減速懸念が強まり、11月9日時点で米S&P500は2021年末比21.4%下落(9月末時点では24.8%下落)、米10年国債利回りは4%超の水準に上昇(債券価格は下落)している。厳しい市場環境が続く中、投資家のファンド保有状況に変化は見られるのだろうか。

平均保有期間はアクティブ4.6年、パッシブ3.5年に伸びる

 国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF除く)を対象に平均保有期間を調べた。平均保有期間とは、純資産残高を解約額で割ることにより推計した値。純資産残高は各月末時点の過去1年間の平均(期初と期末の平均)、解約額は各月末までの1年間の合計を使用した。各月末時点において、現状の解約ペースが続いた場合に保有者がどのくらいの期間で入れ替わるかを試算する。

 図表1は、2017年9月から2022年9月までの各月末時点のアクティブファンド全体、パッシブファンド全体の平均保有期間の推移を示したものだ。図を見ると、(A)と(B)の2つの期間で短期間に大きく変動していることが分かる。(A)は2019年9月から2020年3月までで、2019年末にかけての世界的な株高局面で利益確定売りと見られる解約が増加した後、2020年に入ってからはコロナショックでファンドの残高が減少し、アクティブ、パッシブともに平均保有期間が短期化した。(B)は2022年1月から9月までである。金融市場の混乱が続いているにも拘わらず、アクティブ、パッシブともに平均保有期間が長期化し、2022年9月末時点ではアクティブが約4.6年と2021年末から約1.0年、パッシブが約3.5年と同0.9年伸びた。アクティブは純資産残高が減少(2022年9月末時点で前年末比12.2%減)したものの、解約額も減少(2022年1〜9月の解約額の合計は前年同期比29.8%減)し、平均保有期間が伸びた。パッシブは純資産残高の増加(2022年9月末時点で前年末比19.5%増)が寄与した。

パッシブでも米国株式連動型などの「その他」が顕著な伸び

 パッシブファンドについては、詳細に見ると様相が異なる。パッシブを「日経225連動型」、「TOPIX(東証株価指数)連動型」、及びそれ以外のS&P500連動タイプなど「その他」に分けて見ると、「日経225連動型」の平均保有期間が横ばいに近い一方で、「TOPIX連動型」と「その他」、特に「その他」が2022年に入ってから伸びていることが分かる(図表2)。「その他」は、2022年1〜9月の解約額の合計が約1兆3,019億円と前年同期比5.9%増加した一方で、同期間の純資金流入額も前年同期比57.1%増の約2兆3,698億円と大幅に増加した。「その他」は全体での解約額が増加したものの、それを上回る資金が流入して純資産残高を押し上げ、平均保有期間の伸びに繋がったと見られる。

 「その他」への資金流入をけん引しているのが、つみたてNISA対象の米国株式もしくは世界株式に投資するファンドだ。「その他」の2022年1〜9月の純資金流入額上位を見ると、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式))、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」(愛称:SBI・V・S&P500)など、個別全ファンドにおいても上位を占めるつみたてNISA対象ファンドが並んでいる。世界的な株安に見舞われる中でも、これらのファンドには長期スタンスの投資家による安定した資金の流入が続き、パッシブファンド全体の平均保有期間の伸びをもたらしたと見られる。

アクティブでは国内株式型とバランス型がけん引

 アクティブファンドはどうであろうか。図表3はアクティブのみを対象として、モーニングスターの大分類別に平均保有期間を見たものだ。大分類10分類のうち、2022年9月末時点の純資産残高のウエイトが上位である5分類を取り上げ、3年前(2019年9月末時点)、昨年末(2021年12月末時点)、足元(2022年9月末時点)の平均保有期間を記載した。5分類全てで2022年9月末時点の平均保有期間が前年末から伸びたが、中でも国内株式型とバランス型の伸びが大きい。国内株式は世界株安の中でも底堅く推移しており、TOPIXの下落幅は2022年9月末時点で前年末比▲7.8%に留まる(S&P500は同▲24.8%)。国内株式の底堅さを背景に保有を継続する動きが優勢であったと見られる。バランス型については、金融市場の不透明感が続く中で、分散投資によるリスク抑制を図る投資家の保有が続いたと考えられる。

 金融市場の混乱が続く中での平均保有期間の伸びは、投資家の長期投資に対する意識が高まっていることの表れと考えることもできる。一方で、一時的な動きに留まる可能性もある。世界的なインフレは収まる気配を見せず、各国の金融引き締めによる景気減速懸念は根強い。金融市場の先行き不透明感が深まる中、資金流入の続くつみたてNISA対象のパッシブファンドや国内株式型アクティブファンドなどをけん引役とした平均保有期間の伸びが続くか注目したい。

(武石 謙作)

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