市場変調下でも純資産残高拡大続くパッシブファンド、低コスト米国株ファンドけん引役に資金流入継続
2022-08-12
2022年に入ってから金融市場が混乱している。インフレの高進とその抑制のための各国中央銀行による相次ぐ利上げ、ロシアによるウクライナ侵攻とその長期化などを背景に世界の株価は低調推移が続く。市場の変調を受けて、国内ファンド全体の純資産残高も減少しているが、アクティブ、パッシブ別に見ると様相が異なる。
2022年7月末時点の純資産残高、前年末比でアクティブ減少に対しパッシブは2ケタ増
2022年7月末時点の国内公募追加型株式投信(ETF除く)の純資産残高合計は84兆2,756億円で、2021年12月末と比べると、金額で1兆7,185億円、率にして2.0%減少した。アクティブ、パッシブ別では、アクティブファンド合計が2022年7月末時点で63兆5,083億円となり、2021年末比では、金額で3兆8,036億円、率にして5.7%減少したのに対し、パッシブファンド合計は2022年7月末時点で20兆7,672億円と、2021年末比では金額で2兆850億円、率では11.2%増加した。アクティブが減少した一方で、パッシブでは2ケタの増加となり、対照的な結果となった。
パッシブへの純資金流入額、2022年6月には過去10年間で最大を記録
アクティブ、パッシブの純資産残高推移が相違している背景理由の一つとして、投資先資産の価格変動の違いがある。金融市場が混乱する中で、市場平均以上に価格が下落した株式や債券がアクティブの足を引っ張ったと見られる。2022年7月末時点の年初来リターンを見ると、アクティブ平均が▲3.13%となったのに対し、パッシブ平均は▲1.69%となり、アクティブの苦境が窺える。
もう一つの背景要因は、資金フローの相違に求められる。アクティブファンド合計、パッシブファンド合計の純資金流出入額を見ると、両者ともに2022年7月(2022年7月はモーニングスター推計値)まで20カ月連続で純資金流入となっているが、足元の勢いには明確に違いが見られる。
2022年7月までの累計(1−7月)の純資金流入額は、アクティブ合計が2兆2,974億円、パッシブ合計が2兆3,134億円となった。前年同時期(2021年1−7月の累計)と比較すると、アクティブ合計は金額で8,306億円、率にして26.6%減少したのに対して、パッシブ合計は金額で4,558億円、率にして24.5%増加した。直近1年間(2021年8月−2022年7月)の月次の純資金流入額の推移を見ると、パッシブ合計が2022年3月−6月まで4カ月連続でアクティブ合計を上回った(図表2参照)。また、パッシブ合計の2022年6月の純資金流入額は4,499億円と直近10年間(2012年8月−2022年7月、120カ月)で最大となったほか、同5月は3位、同3月は4位となった。2022年に入ってから、相対的にリスクの高いアクティブファンドに対する資金流入が細る一方で、パッシブファンドには高水準な資金流入が続いている。金融市場が変調をきたす中でも、パッシブファンドには長期スタンスの投資家による資金流入が続いていると見られる。
純資産残高増加額上位のパッシブ4ファンドは純資金流入額でも1−4位を独占
2022年7月末時点で2021年末時点からの純資産残高増加額上位5ファンドを見ると、図表3の通りとなった。5ファンドのうち、「ファンドスミス・グローバル・エクイティ・ファンド」を除く4ファンドが低コストのパッシブファンドとなり、うち3ファンドが米国株式に投資するパッシブファンドとなった。このうち、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」(愛称:SBI・V・S&P500)は2021年年間の純資産残高増加額においてもトップ5となっており、高水準な残高増加が続いている。また、2022年7月までの累計(1−7月)の純資金流入額においても、パッシブ4ファンドは、3,972億円の純資金流入で全ファンド中トップとなった「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」を始め、1−4位までを独占した。
2022年7月末時点のパッシブ合計の純資産残高の国内公募追加型株式投信全体(ETF除く)に対するウエイトは24.6%にまで拡大した(図表1参照)。10年前(2012年7月末時点)は8.8%、5年前(2017年7月末時点)は13.2%、3年前(2019年7月末時点)は16.5%であった。パッシブファンドが国内投信市場において存在感を着実に強めていることが分かる。なお、図表3に記載したパッシブ4ファンドはいずれもつみたてNISA採用ファンドでもあり、今後も安定した資金流入が見込まれる。これらのファンドをけん引役に、パッシブの純資産残高のウエイトが、国内ファンド全体の4分の1に当たる25%を超える日も近そうだ。