アナリストの視点

環境激変の中で求められる幅広い資産への分散投資、インフレヘッジ・分散効果高める「金」にも注目

2022-05-12

 世界の金融市場の先行き不透明感が深まっている。米国ではインフレ抑制のための金融引き締めを受けて長期金利が今月に入って一時3%を超え、NYダウ、S&P500、ナスダック総合指数の主要3指数がいずれも年初来安値を更新した。日本の株価も低調で、日経平均株価は11日終値時点で昨年末比▲8.95%の水準にある。ロシアによるウクライナ侵攻には終息の兆しが見られず、中国での新型コロナウイルス感染拡大の影響などもあり世界的な景気減速懸念が高まっている。欧州でも金融政策の正常化観測が強い。世界株高を支えてきた緩和的な金融政策が転換し始め、地政学リスクも抱える中、どのような投資スタンスで臨めばよいのだろうか。

相場は読めない、幅広い資産への分散投資で世界の経済成長の果実を狙う

 年初来の米国を始めとした株式の急落を受けて、近いうちに株価が反発に転じると予想し、押し目買いのチャンスを窺っている投資家もいるであろう。とはいえ、予想通りに早期に反転する保証はなく、逆に、諸々の不安材料に押されて調整が長引くこともあり得る。そもそも相場の先行きを読むのは困難である。図表1は、国内外の株式・債券・リートの8資産と8資産に分散投資した場合の暦年のトータルリターンを見たもので、各年のリターンの高い順に記載してある。

 一目見てわかるのは、各資産の年間ランクの変動が大きいということだ。先進国株式(図表1のオレンジ色)を例にとると、2018年の▲9.41%から2019年には27.51%でトップとなり、2020〜2021年も第2位となったが、2022年は下位に沈んでいる。国内株式(青色)、新興国株式(赤色)、国内リート(薄オレンジ色)なども年による動きが激しい。その中にあって8資産分散は中位で安定推移している。特定の資産に集中投資した場合、特に株式やリートといったリスク性資産に集中投資した場合には、大きな利益を享受できる可能性がある一方で大きな損失を被るリスクもある。大損失を被った場合には、回復までに長い時間を要するだけでなく、程度によってはリタイヤを余儀なくされることもあり得る。短期の割切り投資ならまだしも、資産を長期的かつ安定的に運用して増やすことを考えるならば、相場は読まないで幅広い資産に分散投資し、長期的なスパンで世界経済全体の成長の果実を享受することが賢明であろう。

 分散投資は、リスクの抑制と長期投資にも繋がる。国内株式、国内債券、先進国株式、先進国債券という代表的な4資産と4資産に均等に投資した場合の過去20年間の累積リターンを見ると、分散投資の安定性が分かる(図表2)。コロナショック(2020年3月)後の急騰により先進国株式のリターンが抜け出しているが、先進国株式はリーマンショック時の2008年〜2009年前半、チャイナショックやBrexit(英国の欧州連合からの離脱)に揺れた2015年〜2016年半ば、コロナショック時などの落ち込み幅が大きく、値動きが激しい。これに対して、4資産分散は先進国株式、国内株式よりもブレが小さく、それでいて先進国株式に次ぐリターンとなっている。損失を迎えることで長期投資と安定的なリターン獲得の可能性が高まる。

分散効果やインフレヘッジから「金」に注目

 経済のグローバル化や取引のデジタル化などを背景に、国内外の株式を始めとした各資産間で分散効果が出づらくなっている点には留意が必要である。図表3は2022年4月までの過去10年間の月次リターンに基づいて、国内株式と各資産の相関係数を示したものだ。相関係数とは、ある2つのデータの関係性(連動性)を示したもので、1に近いほど連動性が高く、0近辺の場合にはほぼ無関係、反対に−1に近いほど逆の動きをするとされる。

 先進国株式、新興国株式を始め、先進国債券、新興国債券、先進国リートも連動性が高い。国内債券は−0.30と逆相関の関係にある。注目したいのは「金」で、−0.03と国内株式との価格連動性が低い。金は、国内投資家の資金が多く流入する先進国株式との価格連動性も相対的に低く、主要投資先である株式との分散効果が期待される。

 現物資産である金には、現預金の価値が目減りするインフレ局面に強いという側面もある。インフレヘッジという点では不動産も挙げられるが、リートは金と比べると株式と価格連動性が高く、分散投資という観点では金の方が勝る。加えて金には「有事の金」というリスク回避局面で資金が向かう傾向がある。米国が3月に利上げを実施するなど金融政策が世界的に引き締め方向にあることや、ウクライナ危機とロシア・西側諸国の対立、米中の緊張関係といった地政学リスクを考えると、インフレヘッジと分散効果が見込まれ、有事の際の安全資産とされる金の存在が注目されよう。

各資産内でよりコストの低いファンドの選択を

 各資産での投資先ファンドでは、よりコストの低いファンドを選択したい。図表4は、モーニングスターのフィーレベルカテゴリー「先進国株式・アクティブ」に属するファンドをフィーレベル別に分類し、10年トータルリターン(年率)の平均を見たものである。フィーレベルは、コストを「見える化」した指標。投資先資産とアクティブ・パッシブ別から設定したカテゴリーにファンドを分類し、ファンドのコストが所属するカテゴリー内でどの水準にあるのかを、コスト水準の低い順に「安い」、「平均より安い」、「平均的」、「平均より高い」、「高い」の5段階で示したものである。

 「安い」が11.79%、「平均より安い」が12.47%となり、低コストファンドの方がリターンで優位であったことが分かる。高コストであってもそれに見合ったリターンが得られればよいとの考え方もあるが、リターンが予想できない半面、リターンの押し下げ要因であるコストは把握できる。よりコストの低いファンドを選択して、リターンの押し上げを図りたい。

(武石 謙作)

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