アナリストの視点

インフレ、米金融引き締め、ウクライナ侵攻−大混乱の相場で今一度確認したい「長期・分散・積立」

2022-03-10

 2022年に入ってから世界の金融市場が混乱している。インフレ懸念や米国の金融引締めに対する警戒感に、2月後半からはロシアのウクライナ侵攻と原油価格の高騰が加わり、先行き不透明感が深まっている。悲観と楽観を背景に乱高下の様相を呈する中、投資の停止・資金引き上げを検討する投資家も少なくないだろう。その前に、「長期・分散・積立」という投資の基本原則を改めて確認したい。

リーマンショック時も分散投資で下落幅抑制、戻りに大きな差

 まずは、分散投資によるリスク抑制を確認したい。2022年2月までの15年間を対象に、国内株式のみに投資した場合と国内外の6資産(国内・先進国・新興国の株式と債券)に均等に分散投資した場合のパフォーマンスをシミュレーションした(図表1)。シミュレーションに際しては、モーニングスターのカテゴリーに属するファンドのリターンを指数化したモーニングスターインデックスを使用した。

 2022年2月末時点の累積リターンは、国内株式の46.75%に対して6資産分散は55.15%となり、6資産分散が8.40%上回った。双方ともに米サブプライムローン問題を受けた2007年後半から2008年9月のリーマンショックを挟んだ2009年前半にかけて大幅に下落したが、最大下落率を見ると、国内株式が2009年2月に投資開始(2007年2月の10,000)から57.00%下落したのに対して、6資産分散は同1月の37.98%に留まっており、分散によるリスク抑制が効いていることが分かる。この差がその後の戻りにも影響し、6資産分散が2013年3月に10,000を回復したのに対して、国内株式は2015年2月と約2年の差が生じた。そもそも、6割近く下落した状態で投資を継続するのにはかなりの忍耐力が求められよう。その点、6資産分散の最大下落率は30%台と何とか踏み留まることのできる水準である。分散投資はリスクを抑制するだけではなく、市場混乱の中で投資を継続するためにも大きな役割を果たすと言える。

10年間保有すればいつ購入してもプラスのリターン

 次に、長期投資の効果について確認したい。先の6資産に分散投資したポートフォリオを10年間保有した場合のリターンを調べた(図表2)。図表中で2012年2月とあるのは、同月に投資して10年間保有した2022年2月時点のリターン(年率)を表す。対象となる投資月2007年2月から2012年2月を見ると、その後10年間のリターンは全61カ月でプラスとなった。当該期間中のどの月に購入しても、10年間保有すればプラスのリターンを享受できたことになる。3年間保有した場合は145カ月中122カ月(84.14%)、5年間保有した場合は121カ月中107カ月(88.43%)でプラスとなった。途中で急落があろうとも、長期間保有することで取り返し、最終的にプラスのリターンを獲得していることが分かる。

急落時の投資継続が戻り相場で利益を生み出す

 最後に、急落時でも投資を継続することが、その後のリターンを生み出すことを確認したい。図表3は、6資産分散ポートフォリオに、2007年2月以降、毎月末に33,000円を積立投資した場合のシミュレーションである。投資を継続した場合(=投資継続)と、リーマンショックが発生した2008年9月から投資を停止して米国株の復調が鮮明となった2012年1月から再開した場合(=投資一時停止)の投資成果を比較した。

 最終的な評価額を見ると、投資継続が投資元本597.3万円に対して877.9万円、投資一時停止が投資元本465.3万円に対して616.1万円となった。収益率は投資継続が46.97%、投資一時停止が32.41%となった。リーマンショックとその後の株価低迷時にも投資を継続して多くの口数を購入したことが、その後の戻り相場においてより大きな利益を生み出したと言える。

 日経平均株価の年初からの下落率は3月9日終値時点で14.15%、NYダウは同8日時点で10.20%に達した。原油価格の下落を受けて9日のNYダウが大幅反発したことから、10日の日経平均株価も急反発しているが、相場の混乱が収まったとは言えない。以上のシミュレーション結果は、「長期・分散・積立」で臨むことで混乱相場を乗り越えられることを示している。相場の混乱を前にして大きな損失を避けたいと考える年配の方は投資停止という選択肢もあろうが、長期投資が可能であれば、投資を継続することの重要性を今一度確認したい。

(武石 謙作)

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