米国株単独と複数国分散の10年リターンはほぼ「五分五分」、米国株でも1サイクルには20年必要か
2022-02-17
かつてはマイナーな投資先だった米国株、グローバル株との合計シェアは3分の1に急上昇
2022年1月末時点におけるカテゴリー別純資産額シェアでは、第1位は「国際株式・グローバル・含む日本(ヘッジなし)」が18.0%、第2位の「国際株式・北米(ヘッジなし)」が17.2%となり、2つのカテゴリーの合計では全体の3分の1を超えた。過去のカテゴリー別純資産額のシェアをみると、10年前の2012年1月末時点では「国際債券・ハイイールド債(ヘッジなし)」の10.6%、「国際債券・エマージング・複数国(ヘッジなし)」の8.4%などが上位で、「国際株式・グローバル・含む日本(ヘッジなし)」は4.7%、「国際株式・北米(ヘッジなし)」は0.4%にとどまっていた。同月末時点におけるファンド全体の純資産額は41兆円、本数も3千本を超える中、「国際株式・北米(ヘッジなし)」に属するファンドの純資産額はトップ3のみが200億円を超え、合計でも1,750億円、本数も51本にとどまる人気の無い、いわばマイナーなカテゴリーであった。
その後も2018年にかけては、「国際株式・北米(ヘッジなし)」の純資産額シェアは3~4%前後での推移が続いたものの、過去数年の米国を中心とした株式市場のパフォーマンスの高まりや、低コストのインデックスファンドが相次いで設定されたことにより、投資家の注目度は高まり、2020年以降はシェアが急増した(図表1参照)。モーニングスターの推計では、2022年は2月も16日までの累計純資金流出入額が「国際株式・北米(ヘッジなし)」は1,800億円以上、「国際株式・グローバル・含む日本(ヘッジなし)」は800億円以上のいずれも流入超過となっており、3月末時点では両カテゴリーのシェアがさらに高まり、全カテゴリーの中で「国際株式・北米(ヘッジなし)」が第1位となる可能性も出てきた。
10年リターンでは米国株の優位・不利な局面が循環、20年リターンでは米国株の優位性が明らかだが
では、人気の海外株式ファンドに投資を行う場合、米国株だけで十分と考えるべきか、やはり複数国への分散投資が必要か。ここ数年の株式市場の牽引役は米国上場の『GAFAM』や『テスラ』などで、各種報道や金融機関の資料などでもこれらの企業の優位性が取り上げられ、先進国株式指数の時価総額比率では7割弱を米国が占めることなどから、米国株への投資だけで十分と考える投資家もいると推測されるが、実際の長期の運用成績はどうであったのか。
月次のヒストリカルデータが取得可能な1970年以降について、米国株はS&P500、複数国株平均はMSCIワールド・インデックスとして検証してみたところ、10年リターンで米国株が複数国株平均を上回ったのは2022年1月末までの505カ月中278カ月と、5割強の月にとどまった(図表2参照)。米国株が一貫して上回った時期をみると、ITバブル期をピークとした前後10年間、2015年以降の2期間に大まかに分けられるが、両期間は金利が低位で推移する中で成長性を評価しやすく、米国企業の優位性が発揮しやすいテクノロジー関連株に特に注目が集まった局面でもある。逆に、割安株や資源関連株、新興国などに注目が集まる局面や、世界的に株式が下落する局面でも米国株が一貫して優位というわけではなかった。また、現状は米国が利上げ局面に入ったことから、株式市場の割高・割安などについて様々な議論があるが、ITバブル期ほど極端ではないものの、すでにほぼ7年間にわたって米国株は対複数国株での優位性を織り込んできており、直近は異例の大規模緩和にも支えられていた点には留意が必要であろう。
それでは10年ではなく、もっと期間を延ばして20年リターンで見た場合はどうか。この場合、9割の月で米国株が先進国株平均を上回っており、米国株の優位性が明らかとなった。ただし、20年リターンの場合には、米国株と複数国株平均の差異は最大でも年率で2%台前半にとどまった月が目立ち、単純平均では1.2%となっていた。年率1.2%という差異をどうみるかについては、例えば元金1,000万円を同率の20年複利で運用した場合には1,269万円になるのだから大きな差なのだが、一方で、信託報酬の高いアクティブファンドで運用した場合はコストとして吸収されてしまう水準でもある。低コストのインデックスファンドで20年投資を行うというのであれば米国株のみを選択したメリットを享受できたが、あえて複数国株平均への投資を避けるほどではなかったともいえる。
上場から20年以内で世界のトップ10入りするダイナミズムが米国株の強みも、評価の移り変わりに注意
最後に、10年リターンでみた場合、米国株が優位な局面とそうで無い局面がある程度はっきりと分かれているように見えるのはなぜだろうか。その理由の一つとしては、米国株特有のサイクルがあると考えられる。例えば、年末時点の世界の時価総額ランキングトップ10をみると、ITバブル期のほぼピークにあった1999年は6社、直近の2021年は8社が米国の企業であったが、両年で共通する『マイクロソフト』のみとなっている(図表3参照)。2021年に第1位となった『アップル』も1999年は300番台、第5位の『アマゾン』でも200番台にとどまっており、第8位の『エヌビディア』は上位500社には含まれていなかった。また、2021年に第3位の『アルファベット』(旧、グーグル)がナスダックに上場したのは2004年で、第6位の『テスラ』は2010年、第7位の『メタ・プラットフォームズ』(旧、フェイスブック)は2012年だ。
つまり、米国株とは、上場からわずか10〜20年程度で、世界の上場企業の時価総額ランキングでトップ10に入るような企業が複数社誕生するような劇的な構造変化が起きるのが強みであり、逆にその反動や裏返しとして、時代にそぐわなくなった企業の衰退や整理が進む過程での低迷期もあり、それらが完全に一巡し、株式市場で注目が高まるには新陳代謝が進みやすいとされる米国でも20年程度の時間は必要であったということではないか。仮に、今後もこのようなサイクルを繰り返すのであれば、次のサイクルでは『GAFAM』や『テスラ』などにとって代わるような企業がこれから出てくるということであり、それらの多くはいまだ低い評価にとどまっているか、上場すらしてもいないということになる。今の『GAFAM』などに対する評価の延長線上で考えると、投資判断を誤る可能性があるだろう。ちなみに、金融危機直前の2007年末の時価総額ランキングのトップ10には中国の企業が3社、香港が1社、ロシアが1社ランクインしていたが、現在のこれらの国・地域への評価や投資スタンスはどのようになっているかもあわせて考えておきたい。
(吉田 誠)